MR-S
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スペクトロスコピー (Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy : MR-S)
 

 NMR現象を利用したスペクトロスコピー(MR-S)は第二次対戦後、磁気共鳴現象が発見されて(1945年)からすぐに研究と利用が始まりました。
 現在、 薬品の製造過程では必ず行われている測定方法で、ある磁場強度の中ではそれぞれの元素が特定の周波数の電波に共鳴現象を起こすことから、試料に含まれている原子の割合などを調べるのに使用されています。
人体用MRSは組織を取り出すことなく体外から計測可能で、プロトン計測では通常の頭部MRI検査に組み入れることができます。検査時間は測定部位により1ヶ所5〜10分程度必要となりますが、計測できない部位もあります。
 画像診断用のMRI装置では、製薬会社が所有しているNMR(20Tesla近いものも作られています)と比べると磁場強度が相当低い(1.5Tesla)ため測定できる元素が限られています。現在実用化されているのはプロトン(1H)とリン(31P)で、両方とも代謝の情報を得られるため研究されていますが、残念ながら確立された診断法が無いのが現状です。
現在のところ調査研究対象で保険適応外検査となっています。最先端医療技術としての位置づけです。

 当院ではMRI装置稼働後、すぐに頭部のプロトンMR-Sについて研究を始めました。現在MRSを臨床応用するべく奮闘中ですがやはり情報が乏しいためメーリンググループを作って情報の共有化を始めました。このページを見て興味のある方は一番下にリンクを貼付けてありますので、連絡して頂ければご案内いたします。

MRS 測定シーケンス
 PROBE S/V™:GE社が開発した虚血性脳疾患用プロトコルで、世界で唯一虚血性脳疾患診断についてFDA(アメリカ食品医薬局)の認可を受けた自動解析手法で、SVにはスペクトル解析に必要な関数計算などをすべて自動化したプログラムが組み込まれています。

 

   MRI(MR-Imaging:磁気共鳴画像)と何が違うの?

 MRIは重要な画像診断としての位置づけをされていますが、MRSは現在のところまだ研究段階で解らないことも多いため、実際に臨床応用している施設は国内では非常に少数のようです、それには限られた装置のみ可能(1.5Tesla以上必要)で維持管理にも特別に注意が必要になる、などという理由があります。
ただ、細胞の代謝(細胞の生命活動)の状態を測定したり原子核の数を直接測定したり出来るので、MRIで検出できないこともMRSでは発見することができます。
例えば脳梗塞(脳虚血)ですが、発症後最も早期に発見できるのはFLAIR画像(MRI)とプロトンMR-Sであるということが研究の結果、だんだん解明されてきました。
CTでは発症後24時間以内の診断は難しいのですが、MRIを使用すると発症後60分が経過していればおそらく全例で検出可能で、装置によってはもっと早い時期に検出可能なプログラムを備えていることもあります。
しかし、MRSではわずか15分後でも検出できることだけではなく、脳神経細胞のみに含まれる物質(N-アスパラギン酸:NAA)が正常状態では高濃度で検出されるため、その状態を観察することにより今後の予測や血栓溶解の適応について判断出来るようになる可能性があります。
早期に発見することが治療に結びつく脳梗塞(脳虚血)では非常に重要なことなのですが、施行できる施設が少ないので今後増えてくることを期待したいと思います。
 他の応用では脳腫瘍に対して、特にアメリカでは精度の高い放射線治療装置(サイバーナイフなど)が開発されたため、腫瘍の浸潤範囲をスペクトラムから推定できる可能性があるので治療計画に使用される例も見受けられるようになってきました。

 

 
 測定例 (脳虚血直後)

 左は脳虚血発症直後(30分以内)で、右は脳虚血発症9日後の同一患者、同一部位のプロトンMRS(PROBE-SV)の計測結果です。
左図 を見るとLactate(乳酸)の存在が認められ、上昇してきていることがわかると思います。通常、正常脳組織でLactateは検出されないので、血栓などによる血流低下により嫌気性代謝が始まり、乳酸の蓄積が始まったことを示しています。
9日後の測定結果(右図)を見ると乳酸(Lactate)のピークが非常に大きくなり、NAAが脱落寸前まで低下し、Choline(コリン)も低下していることから細胞分裂が行われていない可能性があるため、この部分は最終梗塞に陥っていることが考えられます。

このように画像に現れない情報を得ることが出来るため、今後の臨床応用が期待されます。

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